2011年07月02日

『地震予知が不可能だとする根拠について』ロバート・ゲラー教授

きのう、長野県で震度5強の地震があって、東京にお住まいの方は、久しぶりの緊急地震速報に身構えた方も多いのではないでしょうか?
地震発生直前であれば、実際に発生している地震波をキャッチするということで、もちろん、大変な技術だと思いますが・・・どうやって速報を出しているかの理屈は、素人でもなんとなく理解できます。でも、今回の震災であらためて、その難しさを露呈したのは「地震予知」の分野です。

菅総理が浜岡原発を止める時に30年間で大きな地震が87パーセントの確率で起こるから止めたと言った。福島第一原発では実は0パーセントだった。問題ですよね。

そこで今夜は、「地震予知研究は税金のムダ使いだ!」と断じている東京大学大学院 理学系研究科 教授 ロバート・ゲラーさんをお招きして、なぜ、福島第一原発周辺での大地震を予測できなかったのか?など、お話を伺いながら、地震予知が不可能だとする根拠について、一緒に考えてみたいと思います。





ロバート・ゲラーさん:




東京大学地震研究所の所属ではないんですか。

そうです。私は大学院理学系研究科ですが、昔理学部と呼ばれましたが、17年ほど前にいわゆる大学院重点化があって理学部は理学研究科になり、工学部は工学系研究科になりほとんど同じですがネーミングが変わりました。

地震研のある東大で真正面から地震予知は無駄だと言っていると学内に居づらくなることはありませんか。

全然問題ありません。お亡くなりになった竹内均、彼は東大名誉教授でしたが、ニュートンという雑誌の初めての編集長でした。竹内先生は引退する前に理学部の教授でした。僕は竹内先生と同じ講座の教授を今しています。竹内先生は35年前に地震予知を痛烈に批判しました。



今年の4月に『ネイチャー』に寄稿されていましたが、ゲラーさんが地震予知をできないとおっしゃっていますが、その理由は何ですか。



まずいろんな課題を分けてみます。できないという1つの理由は明らかに全世界の地震学を見ると現時点では正確な予知は出来ない。要するに地震研究所の先生でもマイクとカメラがなければ誰でも認めます。ただマイクとカメラがあれば彼らは苦しい立場にいまして口ごもる。この国では良くないことはよくあることですよ。これだけではない。

宮城県沖ではマグニチュード7.5ぐらいの地震が30年以内に99パーセント来るぞと言われていたわけですね。これは予知が成功したと言えるんじゃないですか。

まず、予知と長期的予測は分けましょう。予知は国の法律があって3日以内にいわゆる東海地震が発生すると内閣総理大臣が法律の権限に則って警戒宣言を発令する権限がある。それは直前予知、地震予知。警戒制限はかなりの法律的拘束力がある。新幹線が止まる、高速道路が封鎖される。職場、学校がクローズド。一日だけで警戒制限のコストはたぶん2兆円、3兆円です。あれは常識的に考えて絵に描いた餅で出せない。短期的予知。

長期的予測は確率的なものです。政府が発表している長期的予知は矛盾だらけです。例えば、そもそも長期的確率的予測は生命保険会社のことを考える。僕が59歳の時にわりと健康的で一年以内に死ぬ確率は例えば1,2パーセントぐらいですね。僕が死ぬかどうかは誰も言いません。でも、1万人の59歳のことになれば生命保険のプレミアムの値段を決めてフェアーに決められます。だから、地震の長期的予測は特定の地域が発生する確率は何パーセント、あれはそもそも無意味です。特定の地域だけに絞って何パーセントというのはほとんど無意味です。

それはゲラーさんが死ぬかどうかと聞いているようなものですね。宮城県沖でM7.5ぐらいの地震が30年以内に99パーセントは当たっていないんですか。

当たっているか当たっていないかは定義次第です。それも政府の矛盾だらけです。つまり、当たっているか当たっていないか言えない理由は政府の長期的予測の曖昧さである。つまり、7.5は発表した。でも、許容範囲はどこからどこまでか政府は言っていない。

実際に来た東日本大地震はM9.0、9.1。これは外れていますか。

外れていると僕は思いますが。予測を発表した時に7.5を予測するが、8.0から7.0は許容範囲、あるいは7.7から7.3まではと政府は言っていないがためにあえて政府は言っていないがために。

つまり、マグニチュードが1違うとエネルギーが30倍違う。数百倍のものが来て当たっていると言っていいのかということですね。

要するに天気予報に例えると小雨と予報したのに台風が来る。

はずれたのは今回だけではないそうですね。

ほとんどはずれています。政府の長期的予測は、研究者はそんなにきれいなものばかりやっているわけではない。某政党の中には政治改革本部があったなら政治改革を某政党が本気でやりたかったとは思っていないでしょう。同じように長期低予測はおまけですよ。本音は予算獲得です。つまり、政府がやっている予測モデルは凄い研究者の数が必要です。それぞれの地域を綿密に観測して活断層、地震活動のデータを見てモデリングをやってそれを踏まえてそれぞれの地域の想定する地震の数、想定する地震の繰り返す時間を見積もる、全部無意味です。地震は周期的には繰り返さない。

70年代には周期があると言われていて前兆もあると言われていたけれども、今の世界標準では周期も前兆もないということになっているんですね。

はいそうです。マイクとカメラがない時には地震学のプロは誰でも認めますよ。ところが、マイクとカメラがある時に彼らは複雑。アメリカの映画で悪いボスがヒーローに指差してYou're fired(お前はクビだ)と、地震の予知は出来ないというのは自分の顔を指してI'm firedというふうにね。

地震予知が出来ないということは仕事がなくなるということですね。

逆に言うと彼らは嘘つきではない。確実に地震予知はできるぞとも言っていない。彼らは国会答弁のように。地震予知は困難ではあるが、やめてはいけないとか、国民や政府に責任転嫁する。国民はそんなに馬鹿ではない。出来るならやって欲しい、出来ないなら出来ないことをしろとは誰も思っていないんですよ。

地震予知はこのままやっても精度は高まらないということですか。

地震の予知は現時点では出来ない。出来ないものを精度を良くすることはありえない。近いうちには全く絶望的であと100年経ってもまだできないと思う。100年後に出来るかも机上の空論みたいなものです。

研究は続けていいんですね。

イエス&ノー。結局日本には予知研究は皆無です。地震予知という予算獲得の名目があります。それは昔いろんなところにありましたが、今は国立大学に残っているかいわゆる国研、地震調査研究に名前が変わりました。予知研究という問題は研究者はより研究という予算獲得の名目を使って予算を取っているんだけど彼らは予知研究はやっていません。

いつから予知研究というとお金がもらえるようになったんですか。

いろんな段階ありました。1965年から予知研究計画がスタート。予知研究計画は観測の予算を取るための方便でした。予算頂戴、10年で地震が起きるかどうか答えてあげる、10年経って誰も答えていなくて未だに誰も答えていない。段々エスカレートしました。69年に予知研究計画をやめて第二次計画は予知研究計画ではなくなり予知計画になった。78年に東海地震の実用的地震予知、気象庁の業務が始まりました。24時間後に東海地震が来るぞという警戒宣言の発令するための観測業務が建前でした。プロの間では無理だと誰でもわかっていますが、マイクとカメラがあるところでは関係者は認めない。飲み屋に行って酒を飲ませたらみんな認めますよ。プロレスみたいなものですね。

予知研究者は悪人で国は騙されたと聴こえるが間違いです。予知研究はそもそもあおまけです。本丸は公共事業です。東海地方に地震が来るぞという建前になっていた。そうすると防波堤を作る、道路を作る、ダムを強化する、いろんな防災関連の設備を作る、その予算は毎年地震予算の数十倍、50倍と言われています。

予知と防災関連で年間70億円使われてしまうわけですね。

ただ公共事業を調べて、かなりいろいろあるんですが、凄い予算です。予知できるぞと東海地方は危ないと。実は間違いです。東海地方は安全とは言っていない。もちろんリスクはあるんだけど、ほかの地域とリスクは同じくらいと考えるべき。

一般国民は東海地震は凄いけどそうでないところは来ないと思っていますよ。

そう思っていた人が3・11までにいたのは理解できるけど、3・11の後にはそういう人は頭を使っていないといわざるを得ない。

日本はどこも危ないんだということですか。

そうですよ。その通り。3・11は福島原発の近辺のリスクは0パーセントと言われた。それでもマグニチュード9起きました。あの地域のリスクは0パーセントだが、マグニチュード9の地震が起きたと考えるとじゃあ同じ連中が東海地方が危ないぞ危ないぞと言っていても信用するほうが悪いです。

実際に阪神大震災の時も予知は出来なかったし、中越沖地震も予知は出来なかったし、今回の東日本大震災も予知は出来なかった。

国策で地震予知をする問題の一つとして地震が予知できるという考えが想定外という言い訳を作って対策の不備を生じる原因になると。

そうです。だけど、今の議論を二つに分ける。予知は出来ない。長期的予測も出来ない。別の物だけど共通点は両方は出来ない。両方を政府がやっているふり。両方は予算獲得のため。別物です。要するに想定外という言い訳は俺たちは想定しなかったという意味だけです。政府の御用学者は勉強不足だったということになります。

1950年から2010年までに全世界で4回マグニチュード9の地震が起きました。南米チリ60年、カムチャッカ52年、アラスカ64年、スマトラ2004年。環太平洋の沈み込み型マグニチュード9地震が60年間で4回起きた。何で想定できないというのはその言い訳は全く認めるべきではないんです。本当に御用学者が想定できなかったならば、論文を読んでいないことを認めている。世界の地震の研究、地質科学の研究をフォローしていない。

9.0は必ず来るわけですね。どこに来るかはわからないということですね。

そうです。

ゲラーさんとしては日本の地震予知研究はどうなっていくべきだと思いますか。

まず予知研究事業は廃止すべき。予算をゼロにすべき。要するに何が問題かというと、地震予知をやっているふりの研究者は予算をもらってほかの研究をやるためにそういう方法を使っている。でも、そのためには国民を騙すということになっている。政府は騙されてはいない。行政当局はよくわかっている。騙されているのは国民ですね。それは学問を腐敗させるものです。予知研究をやりたければ誰でもほかの研究者と同じように申請書を書いて学術振興会に出して審査を受けるべき。ほかの研究と同じ土俵で最も良い研究が採択されるべき、良くない研究、予算を受けていない研究はぼつにすべき。地震予知という合言葉でフリーパスです。だから、こういう制度的問題になっています。審査を通る地震予知研究はないと確信しています。あるとしたならば正々堂々審査を通して。

科学雑誌「ネイチャー」ロバート・ゲラーさんの論文

http://www.natureasia.com/japan/nature/special/nature_comment_041411.php


来月23日には『原発が壊れても懲りない人たち』という本が出るということなので。

(2011年07月01日J-WAVE JAM The World「15minutes」から抜粋)


『原発が壊れても懲りない人たち 東大地震学者が告発 日本の防災をダメにした元凶』





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