2007年06月26日
『ジョニ・ミッチェルのトリビュート盤をご紹介!』萩原健太さん
萩原健太さん
前も話したかもしれませんけれども、20世紀の女性ソングライターで100年後に振り返ると、たぶん残るのはこの人。ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)。60年代からカナダ出身でソングライター、パフォーマーとしても素晴らしくて。この人は作る曲が素晴らしくていろんな人のカバーもしています。青春の光と影。Both Sides Now 。ウッドストックという曲。楽曲が素晴らしい。自らも素晴らしい。彼女の作品の素晴らしさを知るアルバムがまもなく。明日、日本版が発売。
『トリビュート・トゥ・ジョニ・ミッチェル』
『A Tribute to Joni Mitchell』
参加しているミュージシャンはスフィアン・スティーヴンス、ビョーク、カサンドラ・ウィルソン、カエターノ・ヴェローゾ。アニー・レノックス、エミルー・ハリス、エルヴィス・コステロ、ジェームズ・テイラー。このアルバムのために収録されたのが中心で一部昔の音源も入っています。それぞれ自分の切り口で演奏している。
恋多き女でグラハム・ナッシュと付き合って別れたけれど、あなたの血の中に生きている聖なるワインのようにとっても苦いけれどもとても甘くてと歌っている歌。「ケース・オブ・ユー」歌詞が良くて忠実にカバーしているのが普通だけれども、プリンスは歌詞にこだわらなかった。この人のアプローチは凄い。2番だけ歌っている。歌詞が凄いので歌詞に引っ張られるのでジョニ・ミッチェルのソウルフルなセンス。決してソウルフルになっていないで、ゴスペルな雰囲気で彼女のメロディーを評価するトリビュートになっている。
オリジナル
Prince「A Case Of You」
ジョニ・ミッチェルの曲は英語でナラティブという物語性を強くはらんでいて、その一部を取り出すのはやってはいけないことだったりするはずなのにプリンスはジェームズ・ブラウンが大好きだけれども、一方でジョニ・ミッチェルを崇拝している。聞きぬいて理解しぬいているからこそ、1番をぶっ飛ばしてというカバーの仕方をしている。
小西克哉さん:しびれますね。聖なるワインのように私の血の中に生きている。あなたはso bitter and so sweet。
一人で今、立っている。当時、別れた恋人に未練をまだ持ちながらも一人で行こうとしている気持ちを歌ったと言われていますが。
小西:ほかの男の人の血も流れているんじゃないですか。
ジェームズ・テイラーからチャッコ・パストリアスから。それとともに幅広い音楽性を獲得して、良いとこどりですよ。それぞれのアーティストがそれぞれの切り口で。ジョニ・ミッチェルも自分でもヒット曲が何曲かあって「Help Me」という曲。ポップな。同じカナダ出身のk.d. langがもっとセンチメンタルな感じでアプローチしている。2年前にカナダアーティストばっかりカバーしたアルバムに加えたい感じもします。
オリジナル
k.d. lang「Help Me」
良いじゃないですか。ジョニ・ミッチェルの魅力を新たに発見するのにも良い盤で、参加したミュージシャンの持ち味を堪能するにも。ジョニ・ミッチェルの味もミュージシャンの味も融合して考え抜いてやった。カエターノ・ヴェローゾも。彼女のアルバムにも接してくれると嬉しいかな。
(2007年06月26日TBSラジオ「ストリーム」より)